笛田 由紀子

【専門分野】

中毒学、化学物質の体内動態、化学物質毒性評価、発達神経毒性

【学歴】

昭和53年 九州大学理学部物理学科 卒業

平成元年  医学博士号取得(産業医科大学 乙第15号)  発生医化学 『Experimental animal epilepsy A new devicefor the induction of epileptic seizures in the murine, El mouse』、『Crossbreeding analysis of the mouse epilepsy』、『Susceptibility of chimera mice to epileptic convulsion

【学会(研究会)等】

日本神経科学学会、日本産業衛生学会、日本女性科学者の会、ブレインサイエンス研究会(評議員)、日本産業衛生学会産業神経・行動学研究会、日本産業衛生学会産業神経・生物学的モニタリング研究会、日本生理学会(評議委員)、日本毒性学会、日本労働衛生工学会、日本DOHaD学会、Society for  Neuroscience (foreign membership)Society of Toxicology (full membership)Societyfor Developmental Origins of Health and Disease

【社会活動】

・平成17年-26年
文部科学省 スーパーサイエンス・ハイスクール (小倉高校) 講師
・平成18年-平成20年
お茶の水女子大学社会人教育「化学・生物総合管理の再教育講座 化学物質総合管理学労働現場におけるリスク評価と管理」講師 
・平成19年-平成20年
お茶の水女子大学社会人教育「化学・生物総合管理の再教育講座 化学物質総合評価学特論 分子がささえる脳の働きと脆弱性」オーガナイザー・講師
・平成19年‐20年 
お茶の水女子大学社会人公開講座「化学・生物総合管理の再教育講座」推進委員会 推進委員
・平成20年-現在に至る 
産業医科大学「産業医学実験研修」講師
・平成21年-22年 
産業医科大学環境マネジメント学科と福岡県立北筑高等学校の高大連携プロジェクトの「高大連携準備連絡会」メンバー
・平成21年-平成27年
産業医科大学環境マネジメント学科と福岡県立北筑高等学校の高大連携プロジェクト 「チャレンジラボ」講師
・平成21年 
環境マネジメント学科社会人教育プログラム「職場の安全衛生技術 科学因子による生体影響の評価」講師
・平成22年 
東京工業大学社会人教育院「知の市場」「労働現場におけるリスク評価と管理」講師平成22年 東京工業大学社会人教育院 「脳と化学物質事例研究」オーガナイザー・講師
・平成25、28年
精華女子高等学校体験学習 コース「動物実験を考える」講師

【研究テーマ】

産業界では約6万種の化学物質が使用されていると言われています。その化学物質の中でも、有機溶剤の分類が近年複雑になってきました。有機溶剤の物理化学的な性質のために生体影響が懸念されている産業化学物質です。

その物理化学的な性質ゆえに、生体に対して以下のように侵入し、影響を与えます。

① 常温で波液体であるが揮発性が高いため、蒸気となって作業者の呼吸を通して体内に入る

② いったん体内に入ると親油性が高いため脂肪が多い臓器に蓄積しやすい

③ 油脂に溶ける性質があるため、皮膚からも吸収される

④ 肝臓で代謝をされるが、必ずしも有害性がなくなるわけではなく、むしろ代謝産物によって有害性が高まる場合がある、などが挙げられます。

 近年、有機溶剤の不適切な使用によって、ある作業現場でがんが集団発生するという曝露事故が発生しておりますし、女性の職場進出にともない化学物質に曝露される危険性も増えております。

 ところで、私たちの体は数10兆もの細胞で構成されています。その一つ一つの細胞は、脂質二重層という膜でおおわれている構造をしています。体内の脂肪というと脂肪組織を思い浮かべるかもしれませんが、身体全体に脂質が細胞の構成要素として存在しているのです。特に、神経系の細胞はシグナルを効率的に伝えるために特殊な構造をもち、そのために脂質が多い臓器となっています。

脳には5つの連合野の働きがあります。体を動かす指示をする運動連合野、感覚情報を分析し、空間を認識する頭頂連合野、視覚・言語機能など視覚情報からより有用な情報を引き出す後頭連合野、思考・学習・推論・意欲・情操・理性・表現などと人特有の知性、感情、意志で人間らしさを司る前頭連合野と、記憶・聴覚などの中継となる側頭連合野といった5つの領域で構成されています。脳はこのような機能を脳内に局在させることによって、『人間らしさ』を司っている大切な臓器なのです。しかし、体内に侵入した有機溶剤にとっては、恰好の『親しみやすい臓器』なのです。有機溶剤は脂質を溶かします。つまり、神経細胞の機能にとって有害な化学物質ともいえるのです。

本研究ラボでは、有機溶剤の神経毒性に焦点を当てて、以下の3つの研究テーマで実験を進めております。

I.      有機溶剤に曝露されたときの血中濃度から脳内濃度を予測する動物モデルの検討

有機溶剤作業の曝露の生物学的モニタリングでは、血液または尿を試料として用います。血中濃度から脳内濃度が推定できれば、有機溶剤が標的とする神経系の濃度を直接測らなくても(実際、ヒトの脳内の濃度なんて測れません)、血中濃度からリスクを見積もれるのではないかと考えています。しかし動物モデルを使うことから、どのようにヒトに外挿するのかという問題を解決しなければなりません。

II.     子供は大人の縮小版ではない!!発達神経毒性評価法の開発に関するex vivo研究

近年、自閉症などの発達障害が急速に増加し、社会問題となってきました。その原因の一つとして、脳の発達期における化学物質への曝露を考えています。発達期の神経系は大人よりも感受性が高いことが知られており、かつその健康被害が長期にわたることも懸念されています。女性の職場進出で化学物質に曝露されるリスクが高まりますので、発達期における化学物質の毒性評価法が必要となります。現在、国際的なガイドラインを改善する方法を欧米では検討しており、本邦でも評価法を提案できないかと思って、複数のアプローチで検討すべく共同研究を進めています。

III.    有機溶剤による神経細胞への直接作用の解明

有機溶剤が脂溶性という性質を持つことはわかるのですが、実際、脳内に侵入したときに神経細胞の機能をどのように障害するのか、ということは実はデータが多くはないのです。その理由は、揮発性が高いために、細胞を用いたin vitro実験では有機溶剤濃度のコントロールができないからです。我々は濃度をコントロールするために、酸素と二酸化炭素の混合ガスを人工脳脊髄液に溶かすために気液平衡を利用して、脳スライスに灌流する人工脳脊髄液内の有機溶剤濃度のコントロールに成功しました。この装置によって、有機溶剤の脳神経回路への影響を調べることができるようになりました。


 

研究業績

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